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肺癌に新たな抗PD-L1抗体、アテゾリズマブ(テセントリク)が登場 [免疫療法]

2018年1月に肺癌患者さんを対象に、ニボルマブ、ペムブロリズマブ(いずれも抗PD-1抗体)に続く、第三の免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブ(テセントリク、抗PD-L1抗体)が日本で承認されました。今月、薬価収載されたことから、いよいよテセントリクが臨床現場でも使われるようになります。

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このアテゾリズマブは抗PD-1抗体ではなく「抗PD-L1」抗体です。抗PD-1抗体はTリンパ球表面にあるPD-1タンパクを標的とした抗体薬でしたが、今回の抗PD-L1は腫瘍細胞の表面にあるリガンド(L)タンパクであるPD-L1を標的とした抗体薬です。PD-1とPD-L1が互いに結合することで、腫瘍免疫が機能しなくなってしまう不都合が生じているところを抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を使用し、ブロックすることで、本来患者さん自信に備わっている腫瘍免疫を再活性化する役割を果たす薬剤です。

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この新薬も承認の根拠となった試験から、まずはプラチナ併用療法後に増悪した二次治療以降で、アテゾリズマブ単剤で使用されることが予想されます。しかし、既に更なる治療戦略は練られており、昨年末には初回治療として化学療法との併用療法で有効性が示されています(IMpower150試験)。2つの図にある生存曲線が、アテゾリズマブと化学療法の併用療法の有効性を示しています。この試験の詳細なデータは夏前までには発表されると思いますが、将来的には早い段階で免疫チェックポイント阻害剤を化学療法などと併用して投与する戦略が推奨されるようになることが予想されるでしょう。



IMpower150試験は、進行または転移性非扁平上皮NSCLC患者1202名を対象に、A群(アテゾリズマブ[1,200mg静注]+カルボプラチン[AUC 6]+パクリタキセル[200mg/m2静注])、B群(アテゾリズマブ[1,200mg静注]+カルボプラチン[AUC 6]+パクリタキセル[200mg/m2静注]+ベバシズマブ[15mg/kg静注])、C群(カルボプラチン[AUC 6]+パクリタキセル[200mg/m2静注]+ベバシズマブ[15mg/kg静注])の3群に1:1:1の割合でランダム化し、各群の投与レジメンに従い3週ごとに治療が実施された。

主要評価項目はEGFR遺伝子変異陽性およびALK融合遺伝子転座陽性を除くITT(Intento to treat)解析集団ならびにT細胞活性調整因子(Teff)の遺伝子発現により層別化した集団におけるPFSおよびITT解析集団における全生存期間(OS)であった。

主要評価項目のEGFR遺伝子変異陽性およびALK融合遺伝子転座陽性を除くITT(Intento to treat)解析集団におけるPFS中央値はアテゾリズマブ併用療法群で8.3ヶ月、対照群で6.8ヶ月と有意にアテゾリズマブ群でPFSの延長を認めた(HR=0.62、95%信頼区間0.52-0.74、p<0.0001)。OS中央値はアテゾリズマブ併用療法群で19.2ヶ月、対照群で14.4ヶ月と有意にアテゾリズマブ群でOSの延長を認めた(HR=0.775、95%信頼区間0.619-0.970、p=0.0262)。

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抗生物質が免疫療法の効果に影響を与える [免疫療法]

Negative association of antibiotics on clinical activity of immune checkpoint inhibitors in patients with advanced renal cell and non-small cell lung cancer.

Ann Oncol. 2018 Mar 30. doi: 10.1093/annonc/mdy103.

最近、免疫療法の分野では腸管内の細菌叢(マイクロバイオーム)と免疫療法の有効性の効果が関連していることが注目されています。 抗生物質は一般的に、腸内細菌のバランスを崩すことが知られており(なので、抗生剤で下痢をする方もいますよね)、今回の論文は免疫療法の効果を減弱させてしまう可能性を示唆しています。

Abstract
BACKGROUND:
The composition of gut microbiota affects anti-tumor immune responses, preclinical and clinical outcome following immune checkpoint inhibitors (ICI) in cancer. Antibiotics (ATB) alter gut microbiota diversity and composition leading to dysbiosis, which may affect effectiveness of ICI.

PATIENTS AND METHODS:
We examined patients with advanced renal cell carcinoma (RCC) and non-small cell lung cancer (NSCLC) treated with anti-PD-(L)1 mAb monotherapy or combination at two academic institutions. Those receiving ATB within 30 days of beginning ICI were compared to those who did not. Objective response, progression-free survival (PFS) determined by RECIST1.1 and overall survival (OS) were assessed.

RESULTS:
Sixteen of 121 (13%) RCC patients and 48 of 239 (20%) NSCLC patients received ATB. The most common ATB were β-lactam or quinolones for pneumonia or urinary tract infections. In RCC patients, ATB compared to no ATB was associated with increased risk of primary progressive disease (PD) (75% vs 22%, p < 0.01), shorter PFS (median 1.9 vs 7.4 months, hazard ratio (HR) 3.1, 95% confidence interval (CI) 1.4-6.9, p < 0.01), and shorter OS (median 17.3 vs 30.6 months, HR 3.5, 95% CI 1.1-10.8, p = 0.03). In NSCLC patients, ATB was associated with similar rates of primary PD (52% vs 43%, p = 0.26) but decreased PFS (median 1.9 vs 3.8 months, HR 1.5, 95% CI 1.0-2.2, p = 0.03) and OS (median 7.9 vs 24.6 months, HR 4.4, 95% CI 2.6-7.7, p < 0.01). In multivariate analyses, the impact of ATB remained significant for PFS in RCC and for OS in NSCLC.

CONCLUSION:
ATB were associated with reduced clinical benefit from ICI in RCC and NSCLC. Modulatation of ATB-related dysbiosis and gut microbiota composition may be a strategy to improve clinical outcomes with ICI.
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免疫療法のトピックス(1) [免疫療法]

これまでの免疫療法は効果に疑問符が付く程度のものでしたが、2012年にブレークスルーが起こり、今や肺癌治療の4本目の柱となりました。

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ちなみに、残りの3本の柱は「手術」「放射線療法」「化学療法」です。

そこで免疫療法のトピックスをご紹介します。

この10年で免疫チェックポイント阻害薬の開発はマウスからヒトへ移行し、臨床応用される時代に至りました。その代表薬が抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体です。イピリムマブを代表薬とする抗CTLA-4抗体はT細胞表面に存在するCTLA-4を阻害することにより抗腫瘍免疫応答を増強します。一方で、抗PD-1抗体は活性化T細胞表面に存在するPD-1を、抗PD-L1抗体は腫瘍細胞表面に存在するPD-L1を阻害することにより抗腫瘍免疫応答を増強し抗腫瘍効果を示します。これらの免疫チェックポイント阻害薬は、治療開始後に一度増悪してから効果を示す症例もみられます。つまり治療開始後、腫瘍量は増加を示した後に縮小する症例もみられるのが免疫チェックポイント阻害薬の特徴とも言えます。臨床活性のパターンは通常の化学療法と同様に腫瘍径が経時的に縮小するものもあれば、新規病変が出現したとしてもその後縮小を認めるもの、増大してから(PD判定後に)腫瘍径の縮小を認めるものもあります(下図)。

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そのため、専門家らによるワークショップが開催され、そこでこれらの特徴を生かし、免疫チェックポイント阻害薬のリスクベネフィットを考慮した新たな抗腫瘍効果判定方法の確立が議論されました。具体的には、PD(増悪=肺癌が進行したことを指す)判定するために確定(Confirmation)を要することや、臨床的には有意な所見ではない新規の微小病変の出現は許容することなどが挙げられます。その結果、Immune-related Response Criteria(irRC)が新たに提唱されました。(下図)

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Modified WHO(mWHO) Criteriaと比較して、新病変が出現しても腫瘍径の総和が50%以下となればPRと判定することやPDと判定するには4週間以上の間隔で腫瘍径の総和が25%以上増大していることを確認(Confirmation)しなければならないことが効果判定基準として採用されました。これらの基準を免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果のパターンに当てはめると、約10%の症例はmWHO効果判定基準でPDと判断された後も治療を継続することで抗腫瘍効果を認めることが明らかとなっています。

続きは次回のブログで。







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