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進行扁平上皮非小細胞肺癌に対する免疫療法+化学療法(KEYNOTE-407試験) [免疫療法]

米国では既に、進行非小細胞肺癌患者の初回治療として免疫療法+化学療法の併用療法が実臨床で行われていますが、今回は扁平上皮癌に対する免疫療法+化学療法の有効性のエビデンスを示した第三相試験の紹介です。今年のASCOでも既に発表されている内容です。
非扁平上皮癌の場合は化学療法としてプラチナ+PEM(ペメトレキセド)併用療法が使われていましたが(KEYNOTE-189試験)、扁平上皮癌の場合はPEMが使用できませんので、本試験では化学療法としてカルボプラチン+パクリタキセル療法が用いられています。
プラチナ併用療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、全生存期間が4ヶ月以上延長することが示されており、今後日本でも適用拡大が認められれば、初回治療から免疫療法+化学療法の選択肢が増えてくることが見込まれます。


未治療転移性扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回治療として、カルボプラチン+パクリタキセル/nabパクリタキセル+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較するランダム化第三相試験(KEYNOTE-407試験)の結果、化学療法とペムブロリズマブの併用療法は化学療法と比較し、有意に無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を延長することが、University Hospital 12 de OctoberのLuis G. Paz-Ares氏らによって発表された。


KEYNOTE-407試験は、切除不能IV期扁平上皮NSCLCを対象に初回治療として、カルボプラチン+パクリタキセル/nabパクリタキセル+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較するランダム化第三相試験である(図1)。

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本試験に登録された患者はカルボプラチン(AUC=6、3週毎)+パクリタキセル(200mg/m2、3週毎またはnabパクリタキセル(100mg/m2、毎週)+ペムブロリズマブ(200mg、3週毎)併用療法群とカルボプラチン+パクリタキセルまたはnabパクリタキセル+プラセボ群に1:1に割付された。また、両群でそれぞれ、ペムブロリズマブとプラセボによる維持療法も行われた。プラセボ群に割付られた患者は、増悪後の後治療としてペムブロリズマブによるクロスオーバー治療が許容された。本試験の主要評価項目はPFSとOS、副次的評価項目は奏効率および奏効期間、安全性であった。今回、Paz-Ares氏は332例のPFSイベント発生時に予定していた2回目の中間解析データの結果を発表した。データカットオフ日は2018年4月3日で、349例のPFSイベントを認めた。フォローアップ期間中央値は7.8ヶ月であった(範囲0.1-19.1ヶ月)。

 本試験では559名がランダム化され、ペムブロリズマブ+化学療法群に278名、プラセボ+化学療法群に281名が割り付けされた。治療が継続されていた症例は併用療法群121名、プラセボ群72名であった。プラセボ群のITT解析対象集団の31.7%で抗PD-(L)1によるクロスオーバー治療が実施されていた。本試験でペムブロリズマブのクロスオーバー治療が実施された症例が75名で本試験以外で抗PD-(L)1抗体の投与が行われた症例が14名であった。併用療法群では、ITT解析対象集団の15.8%が2次治療を受けていた。ベースライン時の患者背景に両群間で有意差は認めなかった。PD-L1の発現が50%以上の症例は併用療法群26.3%、プラセボ群26.0%であった。


 主要評価項目のOS中央値は併用療法群15.9ヶ月(95%信頼区間13.2ヶ月-未到達)、プラセボ群11.3ヶ月(95%信頼区間9.5-14.8)と有意に併用療法群でOSの延長を認めた(ハザード比0.64、95%信頼区間0.49-0.85、p=0.0008)(図2)。OSにおけるサブグループ解析では、年齢、性別、ECOG PSなど全ての項目において、併用療法群のベネフィットが示された。PD-L1の発現割合ごとのOS評価でも同様に、PD-L1の発現を問わず併用療法群の生存ベネフィットが示された。

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 もうひとつの主要評価項目であるPFS中央値は併用療法群6.4ヶ月(95%信頼区間6.2-8.3)、プラセボ群4.8ヶ月(同、4.3-5.78)と有意に併用療法群でPFSの延長を認めた(ハザード比0.56、95%信頼区間0.45-0.70、p<0.0001)(図3)。PD-L1の発現割合ごとのPFS評価でも同様に、PD-L1の発現を問わず併用療法群において、有意な生存ベネフィットが示されたが、その差は特にTPS50%以上の患者集団において顕著であった。

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 奏効率は、併用療法群が57.9%(95%信頼区間51.9-63.8)、プラセボ群が38.4%(95%信頼区間32.7-44.4)で有意に併用療法群が良好であった。奏効期間中央値は、併用療法群が7.7カ月、化学療法のみ群が4.8カ月であった。
 グレード3以上の有害事象の発現率は、併用療法群69.8%、プラセボ群68.2%と同等であったが、免疫関連有害事象および注入時反応(全グレード)については併用療法群28.8%、プラセボ群8.6%と併用療法群で高かった。同様に、いずれかの治療が中止に至る有害事象の発現率は、併用療法群23.4%、プラセボ群が11.8%と併用療法群で高かった。


 本試験の結果から、カルボプラチン+パクリタキセル/nabパクリタキセル+ペムブロリズマブ併用療法はPD-L1の発現を問わず、未治療転移性扁平上皮NSCLCのファーストライン治療における新たな標準治療の一つになったと結論付けれます。本試験における化学療法とペムブロリズマブの併用による生存ベネフィットは以前、このブログで紹介した化学療法により免疫応答を惹起して腫瘍細胞を細胞死に至らせるImmunogenic cell death(ICD) によるものなのか、単純な併用療法による上乗せ効果なのか、科学的にも生物学的にも興味深い結果ですが、患者さんにとっても新たな朗報と言えます。しかし、実臨床では有害事象の管理に注意が必要です。
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by お名前(必須) (2019-03-06 10:16) 

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