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免疫原性細胞死(Immunogenic cell death:ICD)とは? [免疫療法]

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今日は若干難しい内容です。基礎研究の分野の話になるので、臨床情報に興味がある方は読み飛ばしていただいて構いません。
免疫原性細胞死(Immunogenic cell death:ICD)とは、抗がん剤の投与により免疫応答を惹起して、腫瘍細胞を細胞死に至らせることを言います。つまり、抗がん剤が、抗がん剤としてがん細胞に作用する他に免疫応答を誘導してがん細胞を殺す作用のことを言います。このICDは抗がん剤だけでなく、放射線治療でも誘導されることが報告されています。このICDという作用は一般的には下記のような機序が考えられています。
①樹状細胞の活性化=樹状細胞によるがん細胞の貪食能の亢進 カルレチキュリンといわれる分子ががん細胞の表面へ露出されることにより樹状細胞によるがん細胞の貪食能が亢進します。 ②ヒートショックプロテイン(HSP)の細胞表面への露出 HSPは腫瘍抗原と複合体を形成することで、抗原を樹状細胞が取り込むことを促進します。
簡単に説明するならば、このICDという作用はがん細胞を”見える化”することで樹状細胞などの免疫細胞に認識してもらい、抗腫瘍免疫を機能させることで抗腫瘍効果を発揮するものといえます。
上の図は、ICDを含む誘導物質を事前に投与したマウスと投与しないマウスにそれぞれ腫瘍細胞を注入すると、ICDを含む誘導物質を事前に投与したマウスでは腫瘍が形成されなかったことを示しています。 下の図は、免疫能を有するマウスと免疫能がないマウスに先に腫瘍細胞を打ち込み、その後、抗がん剤とICDを両マウスに打つと、免疫能を有するマウスでは腫瘍が消えてしまうことを示しています。つまり、免疫能がないマウスではICDが働かないため、腫瘍縮小効果は抗がん剤のみとなるため、腫瘍が残存しています。


最近では化学療法後に免疫療法が聞きやすいという報告がなされていますが、その理由として、ICDが挙げられます。今後、免疫療法がさらに発展していく中で、抗がん剤が生き残るためには、それぞれの抗がん剤がどの程度、このICD作用を有するのかどうかが、生き残りの鍵を握ることになると思われます。

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