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進行肺癌の初回治療に免疫療法+免疫療法の新たな治療戦略が登場(CheckMate227) [免疫療法]

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先月のAACR年次総会で発表され、NEJMでも同時に結果が公表されましたが、本試験の結果をもとに新たな免疫を用いた治療戦略が実臨床でも行われることが近いようです。



https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1801946


CheckMate227試験の結果から、欧州でHight TMBを有する再発・進行非小細胞肺癌に対する初回治療としてのイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)+ニボルマブ(抗PD-1)抗体の併用療法の適応追加の承認申請を販売元のブリストル・マイヤーズスクイブ社が行ったようです。


まずは、簡単に免疫療法の薬の説明からすると、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体は同じ免疫チェックポイント阻害剤に分類される薬剤ではありますが、厳密には作用部位が異なることから、理論的に併用することで、相加・相乗が期待されます(もちろん副作用も増えることが見込まれます)。そこで、その有用性を評価したのが、このCheckMate227試験です。



これまでの臨床試験のデータから、腫瘍組織中の遺伝子変異の量(Tumor Mutation Burben:TMBと表現します)が多いとネオアンチゲンといわれる変異に伴う特異的な蛋白が作られ、それに対する腫瘍免疫機構が働くため、免疫療法が効きやすいことがわかっています。そこで、TMBが高い患者さんに着目して、解析をしてみるとやはり良い抗腫瘍効果が示されたというのが、この論文の主たる結果です。

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ただし、免疫関連有害事象も多くなることに注意が必要であり、臨床現場でどのように扱うかは今後議論が必要と思われます。


本試験は、未治療の進行または転移性NSCLC患者を対象に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群とプラチナ併用療法群、ニボルマブ単剤療法群、ニボルマブ+化学療法群に割り付けし、各群の有効性を比較した第三相試験である。本試験は3つのパート(パート1a、1b、2)から構成され、パート1aでは腫瘍細胞におけるPD-L1の発現が1%以上の症例を対象に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群、化学療法群、ニボルマブ単剤療法群の3群に割り付けされ治療が実施された。パート1bでは、PD-L1の発現が1%未満の症例を対象に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群、ニボルマブ+化学療法群、化学療法群の3群に割り付けされ治療が実施され、その有効性が評価された。ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群では、ニボルマブ(3mg/kg)は2週ごとに、イピリムマブ(1mg/kg)は6週ごとに投与された。本試験では、FoundationOne CDx assayを用いてTMBの評価も行われた。

主要評価項目はTMBが高い患者集団におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法群と化学療法群における無増悪生存期間(PFS)であった。High TMBの判定は10変異/megabase以上と定義された。パート1部分には2877例の患者が登録され、最終的に1739例が各治療群に割り付けされ、1004例がTMBの評価を受けた。FoundationOne CDx assayを用いたTMBの評価では、評価を受けた患者の44%(444例)がHigh TMBと判断された。High TMBと判断された患者集団は139例がニボルマブ+イピリムマブ併用療法群に、160例が化学療法群に割り付けされたが、両群の患者背景には差はみられなかった。主要評価項目であるHigh TMBと判断された患者集団における無増悪生存期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で7.2ヶ月、化学療法群で5.4ヶ月とニボルマブ+イピリムマブ併用療法群において有意にPFSの延長を認めた(ハザード比0.58、95%信頼区間0.41-0.81、p=0.0002)。1年無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で43%、化学療法群で13%であった。PFSにおけるサブグループ解析では、扁平上皮癌または非扁平上皮癌問わず、PD-L1の発現頻度を問わず、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が良好であった。High TMBと判断された患者集団における奏効率は、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で45.3%、化学療法群で26.9%であった。また、1年奏効持続率はニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で68%、化学療法群で25%であった。予備的に実施した全生存期間の解析では、中央値はニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で23ヶ月、化学療法群で16.4ヶ月と現時点では両群で有意な差は認められなかった。ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群と化学療法群における有害事象の比較では、Grade3-4の全有害事象の頻度はニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で31%、化学療法群で36%と両群で差はみられなかったが、治療関連有害事象(全グレード)による治療中止例はニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で17%、化学療法群で9%と併用療法群で高頻度であった。


本試験の結果から、High TMBの未治療進行非小細胞肺癌患者におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法は新たな治療オプションの1つであり、TMBは未治療進行非小細胞肺癌患者において、日常的に評価すべき重要なバイオマーカーであることが示されました。今後は、未治療進行非小細胞肺癌の初回治療において、PD-L1の発現に加え、TMBによる新たな治療選択が加わったことから、今後、これらのバイオマーカーの結果の組み合わせをもとに、どの治療レジメンを選択するかが重要であると思われます。
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